第 II 部 人間は、そんなに処理できない
Web サイトを使っていると、目の前に書いてある情報を見落とすことがあります。前の画面で見た番号を忘れることも、似た選択肢の違いが分からなくなることもあります。小さなボタンを押そうとして、隣のボタンへ触れてしまうこともあります。
そんなとき、「もっと注意して見ればよかった」「覚えていない自分が悪い」と考えがちです。しかし、画面の作り方を変えることで防げる失敗もたくさんあります。
たとえば、文化祭の申し込み画面を考えてみましょう。
締切がページの端に小さく書かれていれば、見落とすかもしれません。前のページにしか整理番号がなければ、次のページへ進む間に忘れるかもしれません。三十個の催しが名前だけで並んでいれば、どれを選ぶか迷います。閉じるボタンと削除ボタンが小さく並んでいれば、揺れる電車の中で押し間違えるかもしれません。
これは、利用者の能力だけの問題ではありません。情報の置き方、選択肢の見せ方、ボタンの大きさ、使っている機器、周囲の環境が組み合わさって起きることです。
一つの難しそうな言葉で終わらせない
複雑な画面を見て、「認知負荷が高い」と説明することがあります。認知負荷とは、考えたり覚えたりするときに頭へかかる負担を表す言葉です。
便利な言葉ですが、それだけでは何を直せばよいか分かりません。
- 大切な情報が、強い広告に隠れて見つからない
- 前の画面の内容を、次の画面まで覚えておく必要がある
- 選択肢の違いが書かれておらず、比べられない
- ボタンが小さく、狙った場所を押しにくい
- 処理が終わったのか分からず、もう一度押してしまう
どれも「使うのが大変」という点は同じです。しかし、起きていることと直し方は違います。見つからないなら情報の強さや位置を見直します。覚え続けなければならないなら、必要な情報を同じ画面へ残します。違いを比べられないなら、選択肢の数だけでなく説明のそろえ方を直します。
第 II 部で見ていくこと
第10章では、目立つものと必要なものが同じとは限らないことを見ます。第11章では、覚えておく情報を画面の外へ追い出さない方法を考えます。第12章では、何もないところから思い出すより、見えている候補から選ぶ方が助けになる場面を扱います。
第13章では、選択肢が多いときに、分類、検索、絞り込みがどう役立つかを見ます。第14章では、マウスや指で操作する場所の大きさと距離を扱います。
研究で示された数字も登場しますが、「ボタンは必ずこの大きさ」「選択肢は必ずこの個数」と覚えるためではありません。誰が、何を使い、どのような場所で、何をしようとしたときの結果なのかを確かめながら読みます。
利用者を採点するのではなく、利用者と画面の間にどのような難しさが作られているかを見る。それが第 II 部の出発点です。