第 II 部 人間は、そんなに処理できない
第 I 部では、人間が画面をまとめ、揃い、差、色、文字、画像、動き、構成として知覚する仕組みを見ました。第 II 部では、注意、記憶、判断、運動へ進みます。
ここで気をつけたいのは、うまく使えなかった理由を、すぐに利用者の「能力不足」へ戻さないことです。見落とした、覚えられなかった、選べなかった、押し間違えた。そのどれもが、利用者だけの性質で決まるわけではありません。課題、情報の出し方、既有知識、時間、入力装置、姿勢、周囲の環境との組合せで起こります。
「認知負荷」でまとめない
画面が難しく見えるとき、「認知負荷が高い」と言えば説明できた気になります。しかし、その中には異なる現象が混ざっています。
- 必要な情報へ注意を向けられない
- 前の画面の値を頭に保持しなければならない
- 選択肢の違いを比較できない
- 操作対象が小さく、正確に狙えない
- 待ち時間や処理状態が分からない
原因が違えば、確かめ方も変更案も違います。本部では、注意、記憶、再生と再認、選択、運動をいったん分けて観察します。最後に、実際のタスクの中で再び組み合わせます。
実験結果は、条件とともに読む
心理学や人間工学の研究は、Web デザインを考える強い手がかりになります。一方、実験で得られた数値を、そのままメニュー数、ボタン寸法、入力項目数の絶対ルールにはできません。
研究を読むときは、少なくとも次を確認します。
- 誰が参加したか
- 何を見て、何を操作したか
- どの課題を与えられたか
- 何を測定したか
- どの装置と環境を使ったか
- どの範囲まで結論を広げられるか
本書の比較図でも同じです。「良い例」を眺めて終わらず、固定した条件、変えた条件、観察した結果を記します。
人間と画面の間を見る
第 II 部で問うのは、「人間は何個まで覚えられるか」だけではありません。
この画面は、誰に、何を、どの時間だけ保持させているのか。
この選択肢は、数が多いのか。それとも違いが比較できないのか。
このボタンは、小さいのか。それとも操作領域、距離、入力装置との組合せに問題があるのか。
利用者を評価するのではなく、人間と画面の間に作られた処理条件を見ます。それが、第 II 部の出発点です。