付録 C 曖昧なレビューの言葉を観察に変える
曖昧な言葉を禁止することが目的ではありません。違和感の入口として受け取り、第三者が対象と条件を確かめられる文へ展開します。
C.1 「ダサい」
- 聞き直す: どの要素の、どの差が、どの表現意図と合わないか。
- 観察例: 見出しは明朝体、ボタンは幾何学的なサンセリフ、補助ラベルは手書き風で、三つの書体役割に反復規則が見つからない。
- 注意: 流行、個人の好み、対象文化を普遍的な美の基準にしない。
C.2 「いい感じ」
- 聞き直す: 何を維持したいか。どの利用目的・表現意図を支えたか。
- 観察例: 見出しの強さが一段階上がり、本文と補助情報の読む順序を区別できる。
- 注意: 肯定的な評価も根拠を省略すると再現できない。
C.3 「メリハリがない」
- 聞き直す: 何と何の視覚的強さが同程度か。
- 観察例: 主要操作と補助リンクが同じ色、フォントの太さ、面積で、役割差が視覚変数に対応していない。
- 注意: 全要素の Contrast を上げない。
C.4 「余白が足りない」
- 聞き直す: どの要素間の距離が、どの関係を表せないか。
- 観察例: ラベルと入力欄より、入力欄と次のラベルの方が近い。
- 注意: 大きい余白を正解にせず、内外と関係強度を見る。
C.5 「分かりにくい」
- 聞き直す: 誰が、どのタスクの、どの時点で、何を予測・識別・選択・回復できないか。
- 観察例: 送信後に可視状態が変わらず、サーバー受付と結果不明を区別する手掛かりがない。
- 注意: 実際の理解や行動は観察前に断定しない。
C.6 「直感的ではない」
- 聞き直す: どの過去経験や慣習と異なるか。学習後はどうか。
- 観察例: ロゴが画面左上にあるがリンクでなく、サイトトップへ戻る既存期待と異なる。
- 注意: 「直感」を生得的能力とせず、経験と文脈を見る。
C.7 「UX が悪い」
- 聞き直す: どの利用者、目標、期間、接点、結果を指すか。
- 観察例: パスワード再設定後に元タスクへ戻るリンクがなく、再開にホームから 6 操作を要する。
- 注意: 一画面の好みを経験全体の診断にしない。
C.8 「認知負荷が高い」
- 聞き直す: 何を保持し、何を処理し、どの知識を必要とするか。
- 観察例: 三つ前の画面で選んだ権限名を記憶から再生し、現在の略称と照合する必要がある。
- 注意: 要素数や情報量の同義語にしない。測定なしに心的状態を診断しない。
C.9 書き換えても断定を避ける
基本形は次です。
私は[条件]で[対象の差・行動]を観察した。これは[概念・実装・文脈]によって起きる可能性がある。別に[代替仮説]もある。[一つの変更または追加の根拠]で確かめ、[結果]なら仮説を弱める。
観察語へ書き換えても、その概念で原因が確定するわけではありません。