付録 B 曖昧なレビューの言葉を、次の会話へつなげる
デザインを見ていると、「ダサい」「いい感じ」「分かりにくい」のような言葉が出ることがあります。
こうした言葉を禁止する必要はありません。まだ理由を説明できない違和感や好ましさが、最初に短い言葉として出てくることはあるからです。
大切なのは、その一言で会話を終えないことです。
「ダサい」と言われたら
「どこがダサいですか」と聞くだけでは、答える人も困ります。画面を一緒に見ながら、文字、色、形、写真、余白のどこが気になったかを聞きます。
たとえば、見出しは線の細い明朝体、ボタンは太く直線的な書体、補助の言葉は手書き風だったとします。それぞれの書体が違うこと自体ではなく、どの役割にどの書体を使うのかが画面内で繰り返されていない、と説明できます。
流行から外れていること、個人の好みと違うこと、目的に合っていないことは別です。「ダサい」を、誰にとっても同じ美しさの基準にはしません。
「いい感じ」と言われたら
肯定的な言葉も、理由を聞く価値があります。何を残したいのかが分からなければ、次の修正でよかった部分まで消してしまうからです。
「見出しが本文よりはっきり大きくなり、何のページか先に分かる」「写真のまわりに余白ができ、作品と説明が競わなくなった」のように、変わった場所と役割を言葉にします。
「メリハリがない」と言われたら
まず、何と何が同じ強さに見えるのかを探します。
主要な申し込みボタンと、前のページへ戻るリンクが、同じ色、同じ太さ、同じ大きさで並んでいるのかもしれません。ページ名と項目名の文字サイズがほとんど同じなのかもしれません。
すべてを強くすると、強さの差はまた消えます。大切なものを決めたうえで、ほかの要素との大きさ、太さ、色、面積の差を考えます。
「余白が足りない」と言われたら
画面全体の余白を一度に増やす前に、どの二つの要素の間が問題なのかを確かめます。
項目名と入力欄の間より、入力欄と次の項目名の間が狭ければ、どの入力欄がどの項目に属するか分かりにくくなります。この場合は、すべての余白を広げるのではなく、一つの項目の内側と、次の項目までの距離を分けて直します。
「分かりにくい」と言われたら
何をしようとしたとき、どこで分からなくなったのかを聞きます。
送信ボタンを押したあとに画面が変わらず、待つのか、もう一度押すのか分からなかった。売り切れの商品が色だけで示され、購入できない理由が分からなかった。このように時点と対象が分かれば、必要な表示を考えられます。
実際に人が理解できなかったと確認する前なら、「分からないはずだ」と断定せず、「判断する手がかりが画面にない」と、見えている事実を説明します。
「直感的ではない」と言われたら
「直感」は、何も学ばず生まれつき分かることだけを意味しません。ほかのサイトで覚えた使い方が、新しい画面の予想を助けることがあります。
画面左上のロゴを押してもトップページへ戻らないなら、多くのサイトで覚えた使い方と違います。独自の操作が悪いとすぐ決めるのではなく、どの経験からどの結果を予想したのかを確かめます。
「UX が悪い」と言われたら
UX は、一枚の画面の見た目だけではありません。サイトを知り、使い始め、目的を終え、必要ならあとから戻るまでの経験を含む言葉です。
パスワードを再設定できても、元の申し込み画面へ戻るリンクがなく、トップページから探し直す必要があるなら、その途中の流れを具体的に説明します。「UX が悪い」を、ボタンの色が好みではないという意味には使いません。
「認知負荷が高い」と言われたら
何を覚え、何を比べ、何を考え続けなければならないのかを分けます。
三つ前の画面で選んだ権限名を覚え、現在の画面にある略称と比べなければならない。三十個のプランに違いの説明がなく、名前だけを一つずつ開かなければならない。二つでは、直す場所が異なります。
情報量が多いという見た目だけで、利用者の頭の状態を決めつけないようにします。
短い言葉から、具体的な言葉へ
曖昧な言葉が出たら、次の四つを順に確かめます。
- 画面のどの場所について話しているか
- 何と何を比べてそう感じたか
- その場所は、どのような目的や操作に関係するか
- 画面から確認できたことと、まだ予想にすぎないことは何か
長い決まり文句へ置き換えることが目的ではありません。「余白が足りない」から「項目名と入力欄より、入力欄と次の項目名の方が近い」へ進めば、同じ画面を見ながら次の修正を話せるようになります。