付録 D 授業で使うためのガイド
D.1 15 回授業の到達目標と進行
| 回 | 主題 | 到達目標 | 授業内の観察・討議 |
|---|---|---|---|
| 1 | Web デザインを見る目 | 評価語を観察へ書き換える | 同一画面の初回記録を手元に残す |
| 2 | 知覚と Gestalt | HTML 構造と知覚構造を分ける | Blur/矩形化比較 |
| 3 | 近接と距離 | 関係強度を距離で説明する | Form 三案の Grouping |
| 4 | 整列と見えない線 | 端、ベースライン、視覚補正を区別する | 重ね合わせで基準線を描く |
| 5 | 類同と一貫性 | 役割と見た目の対応を監査する | ボタン一覧を作る |
| 6 | 動きと注意 | 注意捕捉と理解を分ける | アニメーション条件比較 |
| 7 | 視覚的階層 | 最初の注意とタスク重要度を比べる | 3 秒観察と無制限観察 |
| 8 | 記憶とまとまり | 保持・処理・知識差を記述する | フォームの再生要求を探す |
| 9 | 再生、再認、選択 | 再認と探索コスト、選択情報量を分ける | メニュー/検索比較 |
| 10 | フィッツの法則と操作 | 見た目と操作領域を分ける | マウス/タッチ/キーボード監査 |
| 11 | メンタルモデルと慣習 | 経験由来の期待を仮説化する | 独自 UI の代替仮説 |
| 12 | フィードバックと状態 | 受付、処理、結果不明、回復を分ける | 状態機械を作る |
| 13 | 観察と仮説 | 複数仮説と反証条件を作る | 概念名だけの指摘を書き換える |
| 14 | DevTools と人の観察 | 画面、コード、人の根拠を分ける | 架空手順と倫理確認 |
| 15 | デザインレビュー | 根拠と価値を示し異論を残す | 初回記録との内省比較 |
D.2 90 分授業の時間配分例
- 0〜10 分: 前回の観察を一つ共有。
- 10〜25 分: 日常例と概念の短い説明。
- 25〜40 分: 図版を個人で観察。答え例は見せない。
- 40〜60 分: 3〜4 人で観察/解釈/評価を分類。
- 60〜72 分: 答えの例と別解を提示し、結論でなく推論を比較。
- 72〜84 分: ブラウザ/DevTools または紙上の一軸比較。
- 84〜90 分: セルフチェックと未解決点を手元に記録。
時間は固定ルールではありません。支援技術、通訳、休憩、読み上げ、討議方法に応じて調整します。
D.3 個人観察からグループ討議へ
最初に個人で書く時間を確保します。発言の速い学生の語が全員の初見を上書きしないためです。共有時は「違う答え」を勝敗にせず、対象、条件、根拠、代替仮説を質問します。発言しない参加方法として、匿名カード、チャット、共同文書、読み上げ不要の提出を用意します。
D.4 答えの例を見せる時機
個人記録の前に例を見せると、例の語を探す課題になります。原則として観察後に見せます。例は診断結果の正解でなく、書き方の一例と明記します。短くても根拠の境界がある例と、詳しい例を並べ、文字数を能力スコアにしません。
D.5 よくある誤解への介入
- 「近接だから余白を増やす」には、どの要素間か、別のまとまり手がかりは何かを尋ねる。
- 「認知負荷が高い」には、保持・処理対象と観察可能な指標を尋ねる。
- 「5 人でテスト」には、目的、リスク、多様性、分母を尋ねる。
- 「DevTools の値が正解」には、見る前の予想と視覚結果を分けさせる。
- 「一貫性」には、意図された例外と表現価値を残す。
D.6 省略可能な節と短縮案
8 回なら、1/2-3/4-5/7-8/9-10/11-12/13-14/15 へ統合します。技術演習を行えない環境では DevTools 操作を実演に置換できますが、画面とコードの根拠境界は省略しません。人を対象とする実習を省き、既存の匿名化済み架空ログで倫理と分析を学べます。
D.7 学習評価を正解にしない
評価対象は診断結果の一致でなく、次の四点です。
- 対象と差を具体的に指したか。
- 観察、解釈、評価を分けたか。
- 代替仮説を残したか。
- 必要な根拠と反証条件を示したか。
これは標準化心理尺度ではありません。文字数、専門用語数、修正数をスコアにしません。教員の異論と学生の少数意見を記録できる欄を設けます。
D.8 図版・配布資料・アクセシビリティ
図版は色だけで差を示さず、パネル ID、短い代替テキスト、長い説明を配布します。拡大可能な形式、十分なコントラスト、キーボード操作、キャプション、読み上げ順を確認します。動画は停止・再生・速度変更と文字起こしを用意します。学生を無断で録画せず、授業参加と研究同意を分けます。
通常の授業活動、成績評価、教育改善、一般化可能な研究は同じではありません。授業で書いた観察を後から研究データへ転用せず、必要なら組織の倫理審査、自由意思による別同意、非参加による不利益の防止、教員と募集担当者/評価者の権力関係、撤回と保持を設計します。授業への参加同意を研究同意とみなしません。
教員用準備チェックリスト
- 到達目標と省略範囲を伝えた
- 図版と代替説明を事前配布した
- 個人観察の時間を確保した
- 答え例を正解として採点しない
- 複数の参加・発言方法を用意した
- 実データ、録画、同意、保持を確認した
- 授業後に未解決点と改善記録を残した